採用担当者として心に残った出会い
私は採用担当者として10年以上、多くの応募者と面接してきました。年齢や経歴はさまざまですが、その中で特に印象に残っている方がいます。
それは、52歳・専業主婦歴20年の女性Aさん。長女が大学受験を控え、これからかかる塾代や受験料、そして入学金や学費を考えると「夫の収入だけでは不安だ」と、久しぶりに正社員として働く決意をされた方です。
長いブランクがあり、特別なスキルも資格もない。それでも「挑戦したい」と口にされたときの真剣な表情を、私は今でもよく覚えています。
再就職活動で突きつけられた現実
最初に挑戦したのは一般事務や販売職でした。しかし、応募してもなかなか返事がもらえず、書類選考で落ちることも多かったといいます。
理由をはっきり伝えられることはありません。でもAさん自身、「きっと年齢やブランクが影響しているんだろう」と感じていたそうです。
同じように就職活動をしていた友人からも「やっぱり50代の正社員は厳しいね」という声を聞き、心が折れそうになったと話してくれました。
「もう専業主婦として過ごすしかないのか…」と諦めかけた時期もあったそうです。
医療事務という選択肢
そんなときに目に入ったのが、「医療事務 未経験歓迎」「50代活躍中」という求人広告でした。
最初は半信半疑だったそうです。しかし調べるうちに、医療事務は全国どこにでも求人があり、実際に40代・50代の女性が多く働いていることを知りました。
「これなら私にもできるかもしれない」
そう思えたとき、Aさんの表情が少し明るくなったのを覚えています。
勉強と資格取得の日々
もちろん不安はありました。「未経験歓迎」とはいっても、本当に採用されるのか。そこでAさんが選んだのは資格取得でした。
通信講座に申し込み、3か月間コツコツと勉強を続けたそうです。
- 朝、家族が出かけたあとに1時間
- 夜、家事を終えて寝る前に30分
その積み重ねが習慣となり、ついに「医療事務検定試験」に合格。
「合格証書を見たとき、涙が止まりませんでした。私でもやり遂げられた、という自信を得た瞬間でした」
資格はAさんにとって、再就職の扉を開ける“切符”になりました。
契約社員から始まった新しい挑戦
資格を手に、地元のクリニックに応募。面接では次のように伝えたそうです。
- 「20年間家族を支えてきた責任感を仕事にも活かしたい」
- 「販売や受付の経験を患者さん対応に役立てたい」
- 「教育費が必要になるため、安定して長く働きたい」
院長先生からは「まずは契約社員として1年間働いてみてください。その後、正社員登用を考えます」との提案がありました。
Aさんは「最初から正社員じゃなくても構いません。ここで一歩を踏み出したい」と覚悟を決め、契約社員としての勤務をスタートしました。
仕事を覚える苦労と支え
最初の数か月は大変でした。カルテ入力やレセプト業務は専門用語が多く、覚えることも山ほどあります。帰宅後に家でメモを読み返しながら勉強する日々。
「今日は迷惑ばかりかけてしまった」と落ち込んで帰る日もありましたが、患者さんからの「ありがとう」という一言や、先輩の「少しずつ慣れてきたね」という声に支えられました。
「自分でも役に立てている」と思える瞬間が、次の日への力になったそうです。
1年後につかんだ正社員登用
欠勤や遅刻もなく、誠実に働き続けた結果、1年後、院長先生から「正社員として迎えたい」と声をかけられました。
Aさんは涙ぐみながら「努力を認めてもらえたことが本当に嬉しかった。20年主婦をしてきた自分でも、新しい道を切り開けるんだと実感しました」と話していました。
採用担当者としての本音
私は採用担当を長くしてきましたが、「資格を取ろうと思っています」というだけでは採用は難しいと感じています。
しかし、Aさんのように 資格を取得して努力を形にし、契約社員から真摯に仕事に取り組む姿勢を見せた人 には、50代でも正社員への道がしっかり開けます。
年齢やブランクよりも大事なのは、「準備」と「誠実さ」。それを実践したAさんは、採用する側にとっても信頼できる存在でした。
まとめ|勇気を持って一歩を踏み出せば道は開ける
52歳、専業主婦歴20年。特別なスキルも経験もなかったAさんが、資格取得から挑戦を始め、契約社員を経て正社員になりました。
「私には無理」と思っている方にこそ、この物語を知っていただきたいです。
50代の誠実さや責任感は、医療事務の現場で確実に評価されます。
最初の一歩は不安でも、資格を取り、勇気を出して扉を叩けば、あなたにも新しいキャリアが開けるはずです。
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